大河ドラマ「新選組！」

愛しき友よ

年が変わらないうちに声を大にして言っておきたい。

「新選組！」はとっても面白い大河ドラマだったっ！！

いやぁー、今夜「スペシャル」と銘打って総集編やってましたけどね、まあ総集編は時間に限りがあるんで、面白いエピソードがガンガンカットされちゃってどうしても駆け足の感は否めない。だから総集編だけ観た人はその良さ・面白さをあまり感じることができなかったかもしれないんだけれど（つうかあのスペシャル版は、1年間観てきた人が『あああんなシーンもあったねえ』と言いながら振り返るためのものでしょう）、私は今年1年、存分に楽しませてもらいました。総集編観ながら（もちろんDVD録画しながら）「ありがとう！」と心の中で手を合わせていた次第です。
こう見えても私、日本史は結構好きなんです。その上大河ドラマは「峠の群像」から観始め、大河ドラマと共に青春期を過ごしてきた身（思いっきりトシがバレるな）。だから、ミーハーな気分でこんなこと書いてるわけじゃないんです（まるで説得力ないな）。久々に、1年間通して、1回も観落とすことなく、途中で投げることなく観ることができた大河ドラマでした。特に最終回は大の中年オトナのクセして大泣き。これまたDVD録画してあって何回も観返しています。終わりよければ全てよし･･･じゃないけど、あの最終回のために私の「新選組！」評価が（元々高かったのが、更に）ドーンと上がりましたね。最終回までに出てきたありとあらゆるエピソードが伏線になって、最終回で落とし前をつけていく、その落とし前をつけるシーンがハンパでなく感動的で。そしてそれとは全く別次元のような時間の流れの中、近藤勇は首を切られてしまうわけです、笑顔で。というわけで、最終回で泣いたりニヤリと笑ったりするためにはそれより前の回を観ていないといけない、そして最終回の前の回（これまたすごい話だった･･･）を堪能するにはその前の回を観ていないといけない･･･。そんなすごいドラマでした。とにかく他愛もないエピソードが伏線になって数回先の話で大化けしてたりするんで目が離せない。途中から「こりゃ総集編作るの苦労するだろうな >NHK」と独り心配していたのですが、今夜の総集編もうまくまとめてきました。総集編も面白かったです >三谷先生。

最終回は視聴率20%超えをしたようですが、通年では視聴率はさほどではなかったようです。また、放映開始当初から「香取慎吾が近藤勇というのは合わない」「近藤勇が坂本竜馬や桂小五郎と知り合いだったという設定は滅茶苦茶」「三谷幸喜の喜劇としてはおとなしすぎる」等々、いろんな批判も耳にしました。しかーし！！そんな批判はまるで当たらない。
そもそも近藤勇が板橋で斬首になった時が35歳。TVに出てくる近藤勇というと、大体が渋いおっさんが演じることが多いわけですが（以前民放で新選組のドラマやってた時は渡哲也だったな）、その方が史実に合わない。香取慎吾大熱演でしたよ。最初の頃こそSMAPの香取慎吾でしたけど、芹沢鴨の処分を決断する頃からSMAPの香取慎吾イメージが完全になくなってしまった（SMAPとして民放に出てくる香取慎吾とギャップが激しくて困りました）。かつて大河ドラマ「太平記」で真田広之が大化けしたみたいに（･･･と書いたら失礼かもしれませんが、私はそう観ました）、香取慎吾もドラマと共に大成長したのではないかと思うんです。
また、近藤勇が坂本竜馬と知り合い（というか心の友）だったという設定、面白かったですねえ。様々なことの伏線に使われてましたね。坂本竜馬を新選組が暗殺していない、という展開の伏線にもなっていました（実際、坂本竜馬を暗殺したのは新選組ではなく見廻組だったというのは、大分前から言われていることですよね）。近藤勇が坂本竜馬と知り合いじゃなかった、という証拠だってないわけだし、京に上る前の近藤勇の活動を記す資料だってほとんどないわけだから、知り合っていてもおかしくない。私は好きな設定でした。かつての大河ドラマ「北条時宗」なんか、時宗が謀殺したはずの異母兄弟の時輔が、蒙古の軍船に乗って日本に帰ってくるという展開でしたからね。そっちの方がよっぽど滅茶苦茶でしょ（私は好きだったけど）。鎌倉時代はフィクションが許されて幕末は許されない、というのは道理に合わないですよ。
そして今回は何と言っても、三谷幸喜の脚本が素晴らしい！歴史と伝統と制約があってやりにくいだろう大河ドラマの枠で、よくあそこまでやったと思うんですよね。革命的だったと言っていい。史実からはズレない。その中で「大河ドラマでここまでやるか？」と思うような笑いの場面と、とにかく感動的な人間ドラマとを、巧みに織り交ぜてくれました。堂々たるお堅い歴史ドラマにならない、ただ史実を追っかけて人間の息遣いをおろそかにするようなドラマにならない、原作を拡大解釈してしまって外してしまわない（どれとは言いませんが、そんな大河ドラマもありました）。とにかく面白かった。
個人的には第33回「友の死」で、山南敬助の死をあそこまで感動的に描きながら（この33話は12月30日に特別再放送されるそうですよ）、その次の第34回「寺田屋大騒動」が完全に三谷色全開のシチュエーション・コメディだったことが印象的。あの落差に「山南さんの死の後にこの話を持ってくるかー！」完全にやられました（観たい人はうちにあるんでどうぞ）。

･･･とまあ長々と書いてしまいましたけど、百聞は一見にしかずなんで、是非観て頂きたい！私はこのドラマ観るまで、新選組のことを大雑把にしか知らなかった。浪士組に応募して京に上ったけど、浪士組の言いだしっぺである清河八郎と分離して、乱暴者の芹沢鴨を排除して京の街で薩長側の志士を切りまくった、刀に頼る時代遅れな連中･･･という認識だったんです。近藤勇と土方歳三と沖田総司しか知らなかったし。あまり好意的な印象を持っていなかった。でもこのドラマで見方がガラッと変わってしまい、新選組びいきになってしまいました。もちろんいろんな評価があるでしょう。でも私は、「新選組！」最終回で、土方歳三の兄（往年の新選組ドラマで土方歳三役で大当たりを取った栗塚旭が好演！）が言ったセリフがとても気に入りました。

「何が正しくて、何が間違っていたかなんていうことは、100年後200年後の者たちが決めればいい」

ありとあらゆる全てのことに、当てはまるような気がする、味わい深い言葉です。

2月からDVD BOXが発売されるようです。上下合わせて6万円弱。
スミマセン、買わせていただきます（ただし我が家の財務大臣の決裁はまだ･･･）。

(2004.12.26)